小説感想。「イリエの情景 ~被災地さんぽめぐり~」(その1)【あまぶん戦利品消化特集】

こんにちは。かんなぎです。

今回は、こちらの作品の感想です。以前より言っていたとおり、「イリエの情景」シリーズの感想を全三回にわたりお届けします。

Webでも読めますが、まずははっきり言っておきましょう。

kakuyomu.jp

 これは商業出版じゃ絶対に出来ない作品だと思います。

でも、震災のロードムービーとしては、絶対にいろんな人に読んで欲しいお話です。気が早いですが、もしメディアミックスをするなら漫画よりもラジオドラマか実写が良いでしょう。それくらい、「二次元らしくない」作品です。

 

イリエの情景とは、簡単に言ってしまえば、「被災地+青春」の作品と言えるでしょう。

僕はかつて同じ「震災」をテーマにした作品の感想を書いたことがあります。

zoukan.knkawaraya.net

「あの日」の話は、そこで十分語りきってしまっているのですが、でもやっぱり覚えてしまっているものです。

もう、六年も経過しているのですね。

我が家は茨城にあったため、地震の被害をもろに受けました。立っていられないほどの揺れ。破壊された壺。片付けも大変でしたが、それ以上に大変だったのは、水の確保でしょうか。

電気とガスはすぐに復旧したのですが、水だけが復旧せず…。トイレを流すために近くの公園から水を汲んで、それを使う始末。(給水の電気系統はかの福島第一原発から電気を取っていたそうです。)

 

ここで少し、被害の状況の写真が少し残っていたので、ご紹介。

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立派な壺がこんな感じに割れてしまいました。

何か落ちたわけじゃありません。揺れたことで、割れてしまったんです。衝撃波、みたいなもんなんですかね? ガラスに声を当てるとある周波数で割れる、みたいな。

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きちんと整列されていたグラスもこんな目に…。慎重に戻したので、なんとか被害は無かったです。

 

f:id:natsumeecho:20110312110131j:plain人形の入っていたケースが見事に割れてしまっています。

 

まあ、被害は少なかったほうだとは思いますが、近隣の電車はレールが歪んでしまったために一ヶ月近く運転見合わせになるなど…ほんとうに酷い有様でした。今でも緊急地震速報の音は、トラウマです。この前防災訓練に参加してきたのですが、もうその音がトラウマで過敏に反応してしまうほどでした。

 

 

 

話を「イリエの情景」に戻しましょう。

帯には「被災地の、今だ。」と書かれており、まさに東北の今を描いているのだろうと思います。

残念ながら僕は東北(特に宮城・岩手)の人間では無いため、なんとも言えないのですが、この小説から伝わってくる東北の人の「あたたかさ」。作者は相当調査を重ねたに違いありません。

道中のホテルのシーンとか、お風呂のシーンとか、バスのシーンとか、いろいろ見ていて微笑ましい場面もありつつ、イリエの困惑気味な様子も気になり、どんどんページをめくる手が止まりません。

思ったのは、やはり「紙媒体で個の作品を読めてよかった」ということでしょうか。

「イリエの情景」はインターネットで読むことが出来ます。カクヨム小説家になろう、Pixivなど…ユーザーが読みやすいプラットフォームで読むことが出来ます。

それは読者に委ねられる。

でも、僕は敢えて「紙媒体で読む」ことを推したい。

第一巻はWeb版(カクヨム版)でいうところの「南三陸町編」まで(1~49話まで)収録されています。

インターネットはほんとうに手軽な文化です。その場所にいて、様々なものを受け取ることを出来る。けれど、それってやっぱりどこか無機質なんですよ。無機質なプラットフォームで、この作品を読むのは勿体ないです。

じゃあ、次はどこで手に入るんだよ~というそこのあなた。

なんと明日イベントがあるらしいですよ。

tomico.jp

twitter.com

大船渡市でイベントが開催されて、そこにはイリエタワーが出来るとか出来ないとか。

是非とも、近くにお住まいの方は3800円を片手に向かってみては如何でしょうか。

インターネットで味わうものとはひと味違う被災地の今を追体験出来ると思います。

 

まだまだ二巻・三巻分の感想を残しているので、今回はそろそろ閉めようと思うのですが…、最後に。

作者はあとがきに「フィクションにした理由は、そう描いた方がリアリティがある」と言っていました。確かにその通りだと思います。これがノンフィクションのルポ小説ならば、そこまで話題になることは無かったでしょう。でも、それを、イリエと三ツ葉の二人の「女性」の旅(つまり、フィクション)にしたことによって、とっつきにくさを取っ払ったと言えます。

そして、読んでいる内に、自分もまるで被災地を旅しているような、そんな気持ちになります。

「イリエの情景」は、本来ノンフィクションで相当と言える題材を、敢えてフィクションに描くことによって、読者を増やし、反響を与えた作品なのだと思います。

 

…あれ? あと二回残ってるのに、けっこう綺麗に〆ちゃったぞ?

 

い、いや、まだ二回残っています。

次回、第二巻の感想でお会いしましょう。ではでは。じゃあのー。

 

 

追記:イリエのポニーテールは可愛い。